観劇日:2026年5月17日(日)11:00公演
劇場:大槻能楽堂
チケット代:12,000円
『能 狂言 日出処の天子』を観に行って来ました。
原作は台詞を覚えるぐらいには読み込んでいます。
狂言は以前はよく観に行っていましたが、最近は全然観に行っておらず、能については「謡」に興味があるので、一緒に声を出してやってみましょう的なワークショップには何回か参加していますが、ほとんど知識がありません。
という私の独断と偏見による原作ファン視点での感想です。
観る前は「何言ってるかわかんなかったらどうしよう・・・」と不安があったのですが、全然そんなことはなく、一部囃子方と台詞がかぶり、最近耳が遠くなりあちこちの劣化が激しい私は聞き取れねーよー(泣)でしたが、そこ以外はおおむね大丈夫でした!
なので「能って難しそう・・・寝そう・・・」という方にもおすすめです。
が、原作はざっと読んで行った方が良いでしょう。
上演時間とストーリーの流れ
第1幕 60分
幕間休憩 20分
第2幕 60分
でした。
流れはざっとこんな感じです。
(抜けがあるかもです。厩戸王子と蘇我毛人の場面がもっとあったかも。ごめんなさい)
第1幕
・厩戸王子が夜刀池で行水(?)していたら蘇我毛人に出会い、毛人が厩戸を女童と勘違いする。
・用明天皇が疫神に連れて行かれて崩御
・穴穂部王子殺害
・物部氏VS蘇我氏(「剣の護法童子よ奉らん!」「南無四天王到来!」「私は血が見たいのだ」物部守屋死亡)
・泊瀬部王子、大王に即位
・大嘗会での舞姫の中に混じって舞を披露する厩戸。その厩戸を女性だと思う毛人「心うたれる女性にはじめて会ったというのに」
・大伴糠手の娘を舞姫の中から選ぶはずが、美形の厩戸を女性と思って選んでしまい馬鹿にされる泊瀬部大王
・賭弓の儀。ここでも色々やらかし面子丸つぶれの泊瀬部大王とさらに株を上げる厩戸
・毛人と布都姫の出会い
・布都姫の雨ごいの儀式
・厩戸の雨ごいの儀式(厩戸王子「布都姫はそたなにはやらぬ」)
第2幕
・厩戸が我が子ながら怖いという穴穂部間人媛と厩戸の弟の来目王子
・布都姫の思いを遂げさせようと毛人のもとに手紙を届けに来る白髪女。手紙を差し替える刀自古郎女。
・布都姫との逢瀬に有頂天になる毛人だったが、実は妹の刀自古と知っていきなり「わたしは妹を失った。そなたも兄を失ったのだ」
・以前見も知らぬ下郎どもにけがされ、冷たい池に入って子どもを墜ろしたことを思い出し、さらにお腹に毛人の子どもを宿したことに苦悩する刀自古
・厩戸のもとに嫁いだ刀自古に「取り引きしようではないか。わたしは蘇我の後盾が欲しい。そなたは腹の中の子の父親が欲しい」ともちかける厩戸
・泊瀬部大王弑逆
・布都姫を殺そうとする厩戸とそれを止める毛人
・厩戸と毛人の別れ
・厩戸「そなた達(仏)が何者をも救わぬのを見てきたぞ」
・額田部女王即位(「厩戸王子を大兄とし万機を以て悉に委ねん」)
・厩戸、菩岐美郎女をめとる。
・厩戸、隋へあてる書の出だしはこうだ・・・「日出処の天子、書を日没処の天子へいたす・・・・」
パンフレットの台本と全然ちがーう!

パンフレットにも「初期稿なので、変更になるかもしれないけどよろしくね」
的な断りがあるとおり
全然違う!!
びっくりしたわー。
というか、この台本のままやっていた方が良かったのでは・・・という気がします。
正直観ていて
「これ、原作知らない人ついてこれてる?」
と思ったので。
その原因としては
・厩戸と毛人の関係の書き込みが少ないので、王子の毛人に対する想いが見えにくい
・刀自古の毛人に対する思いがいきなりすぎる
なのです。
王子も刀自古も毛人が好きすぎるのですが、それがあんまり見えてこない・・・。
残念だ。
能初心者としての感想
舞台の構造について
セット(と言っていいのかしら)は本舞台に移動させると夢殿にもなり、また映像を投影するスクリーンにもなる屏風上のものが置かれていました。

あと囃子方が座っていた上手(とは言わんのか、普通は地謡が座る「地謡座」というらしい)にもスクリーンがあって、夢殿屏風と同じ映像が写っていました。
この夢殿屏風は結構効果的に使われていて、大王の玉座にもなるし、雨ごいでの王子と毛人の一緒に高みに登ろうシーンとかが影で映し出されていて、変に生?で見せられるより想像力をかき立てられて良かったかも。
ただ、王子と毛人の別れの場面で、毛人に向かって地面がバキバキになるシーンも映像で映し出されていたけど、毛人に向かってというより、
単なるひび割れ・・・
にしか見えなかったのが悲しい。
今回印象的だったのが照明です。
場面によっては演者に照明が当たると能楽堂の壁に大きな黒い影がゆらめくんですよ。
それがまた人ならぬものが描かれるこの作品に合っていて、
「おおお・・・」
でした。
あと思ったのが、能ってものすごい「余白」のある芸術なのだなあと。
セットも作り込んでいるわけではなく、小道具も〇〇を△△に見立てています、ということも多いので、情報が過多にならないというか。
想像力でいくらでも補える。
空間も広いし、動作も基本ゆっくり。
普段せわしない世の中に疲れているので、脳がスッキリするというか、別の五感を研ぎ澄ませて観ている感覚でした。
ひとにあらざる厩戸王子
正直野村萬斎さんは年齢的に厩戸はどうなのかしら、と思っていましたが、観終わった後は厩戸王子ができるのはこの人しかいないのかもと思った次第です。
毛人と初対面時の作ったような張り付いたような笑顔。
布都姫の雨乞いを柱の陰からじとーっと見つめ、「気を散じよ!」と毛人は渡さんぞビームで布都姫退散。
いいぞー、もっとやれー。
この時だったか、柱に指を這わせてるのですが、それがなんとも色っぽい。
指の動きがエロいぜ(何を見とるんじゃー)。
毛人と一緒に雨雲を呼び寄せた一体感のあとの「布都姫はそなたにはやらぬ」と言った厩戸の絶望。
そのたたずまいから、放たれるオーラのすごいこと。
終幕、菩岐美郎女を連れて橋掛りから引っ込むのですが、なんとなくその後の上宮王家の滅亡に向かって進んでいるような(原作でも厩戸は山背大兄王子が殺される夢を見ている)恐ろしさすら感じました。
バカ毛人は健在
そんな王子が大好きな毛人。
原作でも毛人がバカ過ぎて、王子も刀自古も悲しいのですが、今作でも毛人がホゲ~っとしており、
「おまえが布都姫、布都姫言うからみんなが不幸になるんじゃ!」
とどつきたくなる毛人でした。
演者の福王和幸さんが背も高く、また黄緑色のお衣装もよくお似合いで
育ちもよく、一見女性にモテる感じをかもし出しているが、実は何も考えていない
毛人感が良く出ていました。
けなしてませんよ、毛人の役柄についてです。
泊瀬部大王はお笑い担当
原作でもマヌケ担当の泊瀬部大王。
狂言パートをになっていて、重苦しい場面の息抜きに。
それはそれで面白かったのですが、真面目幽玄パートとの切り替えが私の頭ではうまくいかなかったので、狂言は狂言で独立して観たかったかもです。
淡水・調子麻呂・トリ・菟道貝蛸皇女(大姫)は大幅カット
王子の妃、大姫は大姫でまた悲しい役どころであるので出て来ても良かったけど、そうすると登場人物が際限なくなっちゃうので、仕方ないですね。
観終わって・・・
ぼんやりとした明かりの中で演じられる能と『日出処の天子』の相性は良いのではないかと感じました。
とはいえ、上でも書きましたが厩戸と毛人の心の絆みたいなのがもうちょっと見たかった。
それがないと
布都姫を殺そうとした厩戸に問う毛人「なぜ?!」
厩戸「・・・わからぬか」
わからんわ!
何、君たち何かあった?ちょっと唐突過ぎて、わからないよ!
というのが原作ファンとしては残念でございました。
原作を読んでいるとそのあたりは脳内補完しているのですが・・・。
公演グッズ

このほかにも、今回の公演のために山岸涼子さんが描き下ろしたイラストグッズもありました。
画像は公演HPをご覧ください。

もっと漫画を舞台化してほしい
もっと色々能でやってほしい漫画があるね、という話を一緒に観に行った友人ともしていました。
山岸涼子さんの短編からもありそうだし、木原敏江さんの『夢の碑』シリーズも良さそう。
特に木原さんは能楽から多くの題材を取っていますしね。
実現したら観に行くでしょう!
と、ここまで書いたところで、『刀剣乱舞』が能狂言になるという情報が・・・。

山岸涼子さん、萩尾望都さん、大和和紀さんのコラボイラストあります。
うーん、『刀剣乱舞』か・・・。←よく知らない。
観劇後のランチ
大槻能楽堂から歩いて10分ぐらいのトリントンティールームで遅めランチをしました。
人気店なので予約した方が良さそう。
観劇後らしいお着物のおばさま方も多く来られてました。



